第1章 prologue
ここは、違うというべきなんだろう。
肯定してしまったら、個人情報の《こ》の字もない。
ここで否定したら、帰してくれるかもしれない。
けれど、葵はただ二言目
「はい」
と小さく返事をした。
「ふん、いいえと言えば返して貰えるかと考えるくらいには余裕があるみてぇだなぁ」
ぎくっと肩があがる。
再び合った目は何もかもお見通しだと言っている様で、葵は本能的にさっと目をそらした。
「…誰ですか、あなたは…」
「あぁ゛!?」
キンッと耳に響く声。
しばらく間を置いた後、男はため息をついて言った。
「スペルビ・スクアーロ」
ただ、そう一言呟いたり、
彼は何も答えてはくれなかった。