第2章 戦
「主」
「…はい」
刀に手を当てた太郎太刀は、審神者を自分のそばへと引き寄せる。
「空気が…淀んでいます…」
「はい、主、私からお離れになりませんよう」
「…」
審神者は、小さく頷く。
ギィシャアアアアアアア!
甲高い声をあげて現れたのは短刀の形をした異形なるもの。
審神者達の敵である。
「!、主の霊圧に引き寄せられたか」
太郎太刀は、するりと鞘から刀を抜くと、審神者を自分の後ろへと庇う。
「き、清光君達は大丈夫でしょうか…」
「おそらくは…主、今ご自分の身の心配を」
「は、はい!」
ギィシャアアアアアアア!
「…っ」
キィンと高い音を立て、敵と太郎太刀の刀が対峙する。
強すぎる!
太郎太刀は、敵を薙ぎつつ自分の後ろにいる審神者に素早く目を向ける。
太郎太刀が審神者によって人の姿を得たのは随分前になる。
故に、本丸にいる刀剣男子の中でも高いレベルを誇る。
そしてこの戦場はつい先日、人の姿を得た刀剣男子の為に審神者が吟味して選んだ戦場だ、本来なら太郎太刀一人でもどうとでも出来る戦場だったはずだ、しかし今敵のレベルは太郎太刀と同等に近いだろう。
「主、安全な所まで お下がりを」 「だ、ダメです!太郎ちゃん達が戦ってるのにっ!」
「我ら刀剣は主を御守りし、戦うのが使命」
「っ、で、でも…っ!」
「他の刀剣は心配には及びません。清光殿と光忠殿がいる、今一番危険なのは主です。わかりますね?」
「…、は、い」
ギィシャアアアアアアアと甲高い声を上げ薙ぎ飛ばされた敵が再び太郎太刀に向かってくる。
「主!」
「っ、わかりました!太郎ちゃん御無事で!」
「勿論です」
キィンと刀と刀がぶつかる音がする。審神者はぐっと唇を噛みながら駆け出す。戻るは本丸。