第5章 お手入れ
「ずるいです!」
「えぇ!?」
小狐丸に会うなり、そう言われた審神者は目を丸くして変な声を上げる。
「いえ、元はと言えば…私の怪我がいけないのですが…っ!」
「えっと、小狐丸さん?」
ぐぬぬ、と拳を震わせている小狐丸の話が中々見えない。
「加州清光ばかり、手入れをして貰えてずるいです」
「清光くん?手入れ?」
ふと審神者に浮かんだのは手入れ部屋の事だった。
怪我をした刀達を手入れする場所である。
「小狐丸さん、どこか怪我したんですか?も、もしかして!あの時の怪我がまだ痛むんですか?!」
「え?」
わたわたと慌て出す審神者は小狐丸の腕に触れる。
「ど、何処が痛いんですか?!正直に言って下さい」
「あ、いや、ぬしさま。あの時の怪我はぬしさまがきちんと癒して下さいました故、問題ありませぬ」
わたわたと半ば泣きそうになりながら自分の心配をする審神者に小狐丸は悪いと思いながらも喜びが隠せず嬉しそうに耳が揺れる。
「よかった…」
「ぬしさまは、心配性ですな」
「だって、手入れって…」
「私が言っている手入れとは、コレの事でございまする」