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小狐丸と女審神者

第2章 戦


あの日から、小狐丸は暇さえあれば審神者の側へと向かうようにしていた。

「ぬしさま、ぬしさま。今日は良い甘味が入りましたぞ」
「ぬしさま、ぬしさま。この小狐、ぬしさまの為、茶のいれ方を学びました!」

などと、初期刀で審神者の身の回りの世話をしている歌仙よりも甲斐甲斐しく審神者の世話を焼くが一向に審神者が小狐丸に心を赦す様子はなく、小狐丸は小さくため息を吐く。

「出陣…ですか?」
「そう!先日までは一軍が頑張ってとから、今日からは二軍の僕たちの番!主は君を主軸とした隊を作るつもりらしいから、頑張って!」

ちゃんとお弁当も用意してあるからねー。と光忠は意気揚々と去っていく。

「この私を主軸に?」

光忠の言葉は、小狐丸にとっては信じられない言葉だった。
いや、嬉しい言葉なのだが…。
小狐丸と審神者の会話は至極少ない。むしろ無いに等しいぐらいだ。
そんな自分に隊を任せるというのか?小狐丸は不思議で仕方なかったのだ。

「御本人に聞いてみるか…」

思い立ったが吉日とばかりに、小狐丸はそのまま足を審神者である彼女の部屋へと向ける。

「おや、小狐丸殿?主になにかご用ですか?」
「太郎太刀か」

審神者の部屋の前で正座をしているのは、大太刀の彼だった。

「ぬしさまはいらっしゃるか?」

正直、小狐丸は太郎太刀の事が好きではなかった。自分より審神者に信頼されているから…なんて、完全にヤキモチなのだが。

「ああ、いらっしゃるが今は出陣の為の御着替え中ですよ」
「…は?」
「ですから、出陣の準備中です」
「ぬしさま自らが出陣する…と?」
「ええ」

至極当然の様に頷く太郎太刀に小狐丸は目を丸くするしかない。
審神者である彼女は当然だが女性だその女性が出陣する?

「…審神者というのは、出陣するものなのか?」
「さぁ、どうなのでしょう…私は主しか知りませんし」
「何故、お止めにならない!危険ではないか!」
「主たっての希望…あの方はああ見えて頑固でいらっしゃるのでな」
「っ」
「…太郎ちゃん、準備出来ました」

小さな音を立てて部屋から出てきたのは彼女に合わせて作られた鎧を身にまとった審神者の姿だった。
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