第3章 再び誓う。
「…うぬ」
あれから数刻、うまく体が動かなかった小狐丸だが腕をぶんぶんと動かして今は問題なく動くようだと判断し、布団から立ち上がり軽く体を動かしてみる。
「…問題はないようじゃな」
よし!と頷くと、すぐに先ほど太郎太刀から聞いた事実に耳をしゅんと垂らす。
今回の件で、ここまで重症になったのは自分だけだったらしい。
つまり、今回の件で審神者に一番迷惑をかけたのは自分という事だ。
「…ほんに情けないのぉ…」
もっと己の練度を上げなければ!とぐっと拳を握りしめるとほぼ同時に襖の外から声がかかる。
「小狐丸様、起きてらっしゃいますか?」
「っ、ぬしさま…、はい」
失礼しますと入ってきたのは審神者だった、立ち上がっている小狐丸を見るや否や元から大きな目を更に大きくする。
「小狐丸さん!だ、だめですまだ寝ていないと!」
「今日から内番でも出陣でも、問題ありませぬ!ぬしさま」
「だ、ダメです!せめて今日一日はお休みになって下さい」
「し、しかし」
しゅん、と小狐丸の耳が下げ上目遣いで審神者を見る。
まるで捨てられた犬を連想させる小狐丸の仕草に、審神者はたじろぐ。
「…どうしても、いけませぬか?」
しゅんと下がった耳に捨てられた犬のような目、審神者は小さく唸る。
「…」
「…」
暫くの沈黙の後、審神者は負けた様に息を吐く。
「わ、かわりました!…では、今日一日近侍として書類の整理…お手伝いして頂けますか?」
「っ!?わ、私でよろしいのですか?」
近侍は基本ローテーションと決まっている。
但し、審神者が人見知りの為、新しく鍛刀されたりした刀剣男子はそのローテーションには入っていない。
当然、小狐丸はその入っていない刀剣男子の一人だ。
「はい。構いません…というか、今日はそれ以外認めません!」
「は、はい!この小狐、ぬしさまの為に頑張りまする!」
しゅんと下がっていた耳はぴんっと立ち上がり、小狐丸は嬉しそうにふにゃりと笑う。
「今日一日よろしくお願いいたしますね、小狐丸様」
「こちらこそでございます!」