第8章 元日生まれのあなたへ/流川楓
【元日生まれのあなたへ/流川楓】
私の好きな人は、背が高い。
だからこそ、魅せるバスケが出来るんだと思う。
普段は無口でボーッとしてる事が多い彼だけど、その分、コートでは熱く、機敏に動いている。
「他人の事には興味がねぇ」ってクールに言う割に、後輩思いだったり、仲間思いだったりする。意外と優しい人。
なんて言ったって、彼は負けず嫌い。
桜木くんとは相変わらず、バチバチ火花を散らしている。チームメイトだからこそ、負けたくない意識が強いのかもしれない。
……でも本当は、桜木くんをライバルだと認めてて、自分のレベルまで上がってくることを誰よりも望んでる。湘北に流川レベルが2人も居たら、凄いチームになるのは間違いない。
私も、そう望んでるんだよ。流川……。
だから……まだ日本にいて欲しい。
「……行くの、アメリカ」
「……その内」
元旦の空は雲一つない快晴で、新年の幕開けにはピッタリの空模様だった。
初詣を済ませた私達は、神社の境内の端にあるベンチに腰掛け、青い空に残る一筋の飛行機雲を見つめていた。
「……私も行こうかな、アメリカ」
「……無理すんな」
「無理してないよ! もしかして……私のこと、バカだと思ってる!? 成績は、まぁまぁいいんだから!」
「……ふーん」
「あ、その顔は信じてないでしょ!」
相変わらず、嫌な奴。
けれど、そんな彼の隣は居心地がいい。
大きな体が丸くなってる。厚着をしているのに寒いらしい。そんな見た目とのギャップも、可愛いとさえ思える。
「これ、あげる」
ポッケで温めておいた懐炉(かいろ)を彼に手渡すと、何故か私の手ごと彼のダウンジャケットのポッケへ。
「あったかい」
「……お役に立てたなら、良かった」