第6章 ニブンノイチ/西門総二郎
淡いパステルカラーで溢れる街。
そこへ穏やかな春風が通り抜けていく。
今日は大好きな彼とのデートの日。
いつもより気合いを入れて、着なれないワンピースにもチャレンジしてみた。
「……変じゃないかな?」
街角のお店のガラスに映った自分を見つめ、角度を変えてチェックする。
「よし、大丈夫!」
「お待たせ。何が大丈夫だって?」
「わぁ!? そ、総二郎さん!!」
「今日は、白のワンピースか。……いいね、似合ってる」
「あ、ありがとう!!」
目も見れないほど緊張してる。
デートも初めてじゃないのに……。
総二郎さんは そんな私に笑顔を向け、手を繋ぎ、歩き出した。
「ちゃん、甘いもの好きだったよね?」
「うん」
「この先に美味しいクレープ屋さんがあるんだ」
いつだって、総二郎さんは私に気を使ってくれる。人混みを歩くときは必ず「離れないように」って腕を組んで歩いてくれるし、歩幅も私に合わせてくれる。
こんな素敵な人の本命が何の取り柄もない私なんかでいいんだろうか……と、どうしても考えてしまう。
けれど、総二郎さんは「その素朴さに惚れたんだ」と言ってくれるから、私は私のままでいる。