第5章 第2ボタンをあなたへ/黒子テツヤ・青峰大輝
「卒業生、起立!」
その掛け声にガタッとパイプ椅子から一斉に立ち上がる。いつも彼らの熱気で賑やかだった体育館も、今は彼らの旅立ちを静かに見守っている。
「(……まだ先だって思ってたのになぁ……)」
は、胸元に飾られたピンクの花に目を向けた。その下には「ご卒業おめでとうございます」の文字が飾られている。
手には、卒業の証である卒業証書が入った筒。
まだ先だと思っていた今日の日。
校庭の隅では、タンポポの花が春の知らせを告げていた。
月日というのは、あっという間に過ぎてしまう。
別れの日を迎え、それをは痛感していた。
「(……今日でサヨナラ……なんだね)」
人の隙間から、少しだけ見える水色の綺麗な髪。
彼と過ごすのも今日が最後。
切なさと悲しみで視界が歪む。
もっと話せば良かったな……
もっと会いにいけば良かったな……
もっと彼のプレーを見たかったな……
……ちゃんと伝えれば良かったな……
あなたが好きです、と。
哀愁漂う蛍の光が流れ始め、卒業生たちは順番に退場していく。
も後悔を胸に、涙で濡れた会場を後にした。