第8章 〜奇蹟〜
「浮竹さんも…あれくらいなら、笑って受け流せる様になるよ。今の霊力制御が出来ればすぐにでも」
ふと笑う彼女の笑みは何処と無く憂いを帯びていて。
「それに、貴方の言いたい事もわかってる。だから制御装置に、敢えて数字が見える細工をしたの。力の使い方を誤らない様に、コントロール出来るようにちゃんと彼等には教えるから。ねぇ、だから…そんな化け物を見るような目で、見ないで?」
悲しそうに目を伏せる玲からは贖罪と懺悔の念が見て取れた。
自分の所為で彼等を化け物にしてしまった。
最初は本当に、只の気まぐれだったのだから。
「俺が…彼奴らを止められる様になるまで…修行に付き合ってくれるか」
「浮竹さんの霊力はミミハギ様のお陰で元々総隊長よりもずっと上。身体が弱くて、戦えなかったなら、分からないでしょうけど。貴方は、修練さえ出来れば、ずっと強くなるよ」
「なら…先ずは制御、出来る様にならなきゃね」
ふわりと微笑む玲に魅入られそうになりながらも。
どうにか心を強くして、集中すると、浮き上がった数字は27。
先日より下がっているような気がして玲に問うと。
「そう言えばミミハギ様が力を貸してやるとかなんとか言って浮竹さんの中に戻っていったから…その分、制御出来てない霊力が加算されたのかもね」
「そう、なのか」
「早く制御終わらせたいのなら、暴発する寸言まで霊圧を上げて無理やり屈伏させる事。効率は良いし、その制御装置を付けている限り、暴発は絶対に起こらない。但し、少しずつ慣らしていく方法に比べれば荒いものだから疲れは溜まりやすいかもしれないけど」
コツを教えてくれる玲に頷いて、浮竹は霊圧制御に集中し始めた。
確かに彼女の力は計り知れない。
しかし、だからこそ。
此処まで手を貸してくれる彼女が、藍染の様に敵に廻る可能性は低いのだ。
瀞霊廷が邪魔なのであれば、戦力になるだろう隊長格の病気を治したりはしない。
何もかも事情を知っていて、心を砕いたりなどするはずが無い。
そう、自分に言い聞かせて。
その心の揺らぎに、玲が目を伏せている事には気付かずに。