第8章 〜奇蹟〜
「おや、何だか穏やかだねぇ。あ、朽木隊長。別に助けてなんて頼んでないのに」
「助けたのでは無い。試しただけだ」
表情一つ変えずに受け流す白哉は動じない。
恐らく彼女を傷付けない限り。
「またまた冷たいこと言っちゃってさぁ。本当は僕が更木君に斬られるんじゃないかって心配してくれたんじゃ…うわぁ?!」
「兄も的になるか」
すっと向けられる手掌から、確かな殺気を感じて頭を下げる京楽。
彼の戯け癖も大した者なのだが。
「…さてと。皆少し休んでくる?それとも続ける?」
場を切り替えるような玲の声に、少し考える素振りを見せる死神達。
皆、狛村の様に体力が無尽蔵なわけでも無ければ、久方ぶりの霊圧制御に大分疲れも見えている。
「休息も、修行の内、ですね」
何処と無く皆無理をして続けそうな雰囲気を、卯ノ花がにっこりとぶち壊す。
玲は彼女の無言の圧力に気付いてはいないが。
「うん、ゆっくりで良いからね。焦らなくたって、この場所は常時解放するつもりだし。私に言ってくれれば何時でも来れるよ?」
その言葉に、安堵の表情を見せる面々。
そんな彼等にふわりと笑って。
「部屋は広間に出て左。個室ちゃんと用意してるから、扉の所の名前見てね。じゃあ、解散」
ぱんと手を叩いた玲の言葉通りに、疲れていた死神達は修練場所から姿を消す。
残ったのは、きちんと寝ていた冬獅郎と白哉、安静にしていた浮竹と、未だ倒れている更木のみ。
「…更木さん、治して転移させよっか」
呟いてあっという間に傷を治し、空間転移させる玲。
「…白哉と冬獅郎は制御終わったのか?」
「無論だ」
「まぁな」
何処と無くピリピリし始めた空気に耐えられなくなって浮竹が問うも。
最早それどころでは無い二人。