第8章 〜奇蹟〜
「浮竹、入るぞ」
扉に掛かったプレートで部屋を判断し、声を掛ける。
「あぁ」
返ってきた声に安堵し、扉を開けると、いつに無く顔色の良い浮竹が居た。
「調子はどうだ?」
「日番谷君か。いやぁ、嘘みたいに体が軽いんだ」
「彼奴は、病気ごと治したんだな」
彼の様子を見て、そう断定する。
でなければ、一割しか戻ってなかったとはいえ、玲が消えそうになる程力を使う必要は無かったはずだから。
少し表情が険しくなった事に気付いたのか、浮竹ははっとして此方を見た。
「瑞稀に、何かあったのか?」
彼は聡い。
もう戻ったのだから何があったか言っても構わないが、それだと気にし過ぎるだろう。
そう思って、冬獅郎は首を振る。
「いや。今は飯を作ってる。腹減ってるなら大部屋に戻れよ」
「そ、そうか!良かった。確かに腹は減ったな。お邪魔させてもらうよ」
「あぁ。先に行ってるぞ」
頷いて、冬獅郎は彼の部屋を出た。