第8章 〜奇蹟〜
霊圧制御を終え、躍起になっている他の隊長格を他人事の様に眺めながら、お茶を飲んでいた白哉は、玲の霊圧が異常に弱くなったことに気付いて立ち上がった。
「っ…玲?!」
同じく気付いた冬獅郎を手で制し、告げる。
「後少しだろう。終わらせておけ」
恐らくもうすぐ制御を終えるだろう彼を止めて、足早に彼女の霊圧を辿る。
ともすれば今にも消えてしまいそうな、弱々しい霊圧を。
見つけた時、玲は壁に寄り掛かって息を整えていた。
「玲」
呼びかけると、何時もとは違う何処と無く焦点の合わない瞳が白哉を見る。
「…びゃく、や…?」
「どうした」
「っ…霊力、使い過ぎ…かな…」
苦しそうに息をする玲を抱きとめて、背中を摩る。
「何か出来ることはあるか」
「…は、霊力、同調…出来る?」
「送ればよいか」
こくと頷いた玲に白哉は口付けた。
この方が同調しやすい上に無駄が無いから。
やましい事など、考えていなかった。
しかし、玲が舌を絡めて来た事に、一瞬思考が止まる。
恐らく、枯渇寸前になって渇きを癒そうとする本能だろうと、必死に理性を働かせて。
それでも、つっと口から零れる唾液と、こくりとそれを飲み込む彼女に、欲を煽られない筈もなく。
どうにか安定してきた玲の霊圧を感じ取って、これ以上は理性が持たないと彼女を引き離した。
「っう…ごめ…なさ…」
謝る玲の瞳が、少し力を取り戻していて、白哉は無意識に肩の力を抜く。
「構わぬ」
彼女の口元を拭って、髪を梳いてやると、安心した様に目を閉じた。
が、このまま寝かせられる所に運ぶのは良いが、自分を抑えきれる自信は無い。
そこへ丁度、冷気を纏う霊圧が近づいて来るのを感じて、息を吐いた。
孕むのは安堵か、それとも呆れか。