第8章 〜奇蹟〜
「卯ノ花さん」
「…はい。抑えられそうですか?」
恐らく浮竹の発作の事だろう。
「大丈夫。それより、手を出して?」
不思議そうにしながらも、差し出されたその手に手を重ねる。
霊力を同調させて、制御の乱れた霊圧を鎮めてやると、彼女の顔から色濃かった疲労が消えた。
「疲れたら休んで良いし、焦る必要もないよ。今回だけで終わらせるつもりなんて無いんだから、ね」
「どうして、私達に力を与えようとするのです?貴女には他にはすべき事が…」
「これだって、しなきゃいけないことなんだよ」
もしも、私の意思が砕け、闇に包まれてしまった時。
出来るならこと助けて欲しい。
それが出来なくても、どうにかして私を、殺してほしい。
それだけの力を、彼等が持っていなければ。
私の心は、死んでしまうから。
手を翳した私は、少し離れた場所にテーブルと椅子を人数分創造し、序でにティーセットまで取り出した。
「お菓子もあるからご自由に。浮竹さんは別室で処置してくるから。少し休んでて良いよ」
突然現れた寛ぎ空間に、目を瞬かせている死神達を横目に、私は浮竹に触れて空間転移を発動した。