第8章 〜奇蹟〜
残された隊長格達は顔を見合わせて、玲に手渡された制御装置を見る。
「本当にこんなんで強くなんのか?」
不服そうに眼帯を外す更木から、白哉と冬獅郎以外の死神は距離を取った。
「文句があるなら帰って寝ろ。序でに此処の時空は彼奴が捻じ曲げてる。向こうの一時間がこっちの一日だ。仮に制御に一週間掛かっても、此処から出れば普通に出勤は出来る」
ごぅっと上がる更木の霊圧に眉一つ動かさずに、冬獅郎が説明を補足する。
恐らく玲が言い忘れていた事を。
「一日が一時間、か。化け物だな」
しみじみと呟いた更木に、白哉が刺すような殺気を向ける。
「彼奴を愚弄するなら消えろ。目障りだ」
「好かれてんなぁ。まぁいいや」
ぱちんと制御装置を付けた更木に、冬獅郎が目を向ける。
「数字は?」
「あぁ?15だな」
「それがお前の、今の霊圧制御率だそうだ。どうせ彼奴を斬りたくて来たんだろ」
冬獅郎の冷たい視線に、にやりと笑って肯定する更木。
それを横目で見ながら、白哉は元の制御装置を外した。
更木よりも跳ね上がる霊圧をすぐに抑え込んで、制御装置を付け替える。
彼の目に見えた数字は70だった。
気を鎮め、黙祷するように目を閉じた冬獅郎と白哉を見て、他の隊長格達はもそれぞれ制御装置を身に付ける。
砕蜂の時のように膨大な霊圧上昇は感じないまでも、表示された数字の頼り無さに驚いて、必死に制御訓練を始める死神達だった。