第8章 〜奇蹟〜
「じゃあ、七緒。京楽隊長は京楽ね」
目を見開いてこくりと頷いた七緒が無性に撫でたくなったが、
「酷いなぁ。なんで僕は名前で呼んでくれないんだい?」
何故かかなり悄げた様子の京楽に息を吐く。
「あ〜はいはい、今度ね。他に誰か来そう?」
「えぇ〜玲ちゃん冷たくないかい…?他は…手の空いてる隊長と副官は皆来るんじゃないかい?十一番隊は知らないけどね」
それを聞いて、今まで何か言いたそうに口を開いては閉じていた冬獅郎に視線を向ける。
「ついでだからね、暇な人に声かけてみてってお爺ちゃんに言っといたの」
「…成る程な」
取り敢えず納得した冬獅郎に、さっき言えなかった説明を付け加える。
「後それね、数字が見えるでしょ?」
「…あぁ」
「幾つになってる?」
「68」
「それが今の冬獅郎の霊圧制御率。先ずはそれを100にしなきゃ始まらないよ」
「どうやって……またか」
会話の途中で姿を現したのは浮竹だった。
「…纏めて説明していい?」
「…分かった」
広大な空間に呆然としていた浮竹が、はっと我に返って此方に寄ってくる。
それを確認して、私は彼等の制御装置を創り始めた。
昨日通信機で彼等に報酬として提示した、潜在霊圧制御装置を。
「玲。それかなり霊力食うんじゃ無かったのか」
何時もより時間のかかる創造に、冬獅郎が厳しい目を向けて来る。
「確かに其れなりに力使うけど、昨日の一日一個は嘘だよ」
「…だとしても、お前持つのか?」
翡翠の瞳が心配そうに揺れていて、私はくすと微笑んだ。
「大丈夫だよ。私霊力の回復早いし、この空間は霊子の濃度も上げてあるから」
持つ、と断言しなかったからか、彼の眉間の皺が深くなる。
けれど、私も断言までは出来ない。
流石に、後十人来れば倒れる自信がある。
多分大丈夫だろうけど。