第7章 〜現世〜
「あ、綺麗!」
玲が足を止めたのはアクセサリーショップだった。
そこまで高そうな佇まいではない、何処にでもありそうな、所謂小間物屋。
尸魂界のそれとは細工のレベルが段違いだが。
「そういえばお前、現世の金持ってんのか」
一応確認の為に冬獅郎が問うと。
ぴしりと固まる玲。
その後、何かを思いついた様に掌に意識を集中しようとした彼女を見て。
「いや、創るなよ?」
その手を抑えて止める。
なんでも創れるのはもう嫌という程知っているが。
金銭まで創造されると、流石に色々と困る。
というか、現世の金は確か偽物が作れない様、細かい番号まで振ってあるはずだ。
こっちで犯罪者になるのは御免被りたい冬獅郎だった。
「じゃあ、なんか売れば良い?」
「そういう問題じゃねぇだろ…」
呆れた様に呟くと、悲しそうに揺れた瞳に、溜息。
元々此方の金を持っていない訳でも、買ってやらないなんて意地悪を言った訳でも無い冬獅郎は、頼ろうとしない玲に不満を持っただけなのだが。
「買ってやるって言ってるんだよ」
「え?」
きょとんと目を見開く玲を、ジト目で睨む冬獅郎。
「お前な…。なんだ、その意外そうな顔は」
「う、だって」
琥珀の瞳が何処と無く不安に揺れるのは、迷惑だとでも思っているからなのか。
行動は予測が付かないくせに、こういう所は分かりやすい。