第7章 〜現世〜
空座町の街中を銀髪翡翠眼の美青年と、濡羽髪と琥珀の瞳を持つ美少女が並んで歩けば、自然人の波が割れる。
恍惚と頬を染める女達と、呆然と魅入られる男達。
そんな人間達を横目に、冬獅郎は隣を歩く玲を見遣った。
シックな黒のワンピースに身を包む彼女の義骸は、普段隠れている足を惜しげも無く晒していて、胸元も少し開き気味だ。
確かに現世ではそう珍しい格好ではないかも知れない。しかし、目のやり場に困る事は確かだった。
ふいにぱちっと目が合って、玲が楽しそうに笑みを浮かべる。
「冬獅郎、洋服も似合うよね。格好良いっ」
玲の言葉に朱くならない様そっぽをむく冬獅郎。
「お前…馬鹿にしてるのかからかってるのかどっちだ」
「褒めてるの〜。素直じゃないなぁ」
む、と口を尖らせる玲は、それすら綺麗だった。
少なくとも、そこらの男が鼻から血を出し、何かを必死に堪えて走り去る程度には。