第21章 裁きの門
――死ぬためになど生きないで。
「夢の中で何度も何度も謝った。嗚呼、叱りつけてくれたらいいのに。」
「――それにしても。槙島の目的は一体――。」
上に向かうエレベーターの中で朱が不可解そうに言う。
「槙島は囮だ。多分本命は下に向かっている。そう考えなきゃこの状況で敵が二手に分かれた説明が付かない。地下に監視カメラの無い良く分からない施設があるんだよな?」
『そうなんだけどぉ。シュウくんからの連絡も途絶えちゃってて何がどうなってるのやら――。』
「その施設の正体は槙島達には何となく掴めているはずだ。」
「――じゃあ、なんで?」
未だに不可解そうな表情を浮かべる朱を、慎也は静かに見据える。
「槙島の目的を阻止する事よりも、槙島本人を追い詰める方が優先だ。――そうだろ?」
その言葉に、朱は頷く。
『――慎也くん。上に――、泉がいるのはどうするの?』
控え目に聞こえて来た声に、慎也は当たり前のように答える。
「そんなのひっ捕まえて連れて帰るに決まってんだろ。当分外に出してやらねーよ。」
『――あの女王様が言うコト聞くかしら?』
「聞かせるさ。」
その言葉に、志恩は人知れず安堵のため息を吐いた。
「――どうすると思う?彼ら。」
横に座る泉を見れば、槙島は静かに問う。
「――慎也と朱ちゃんが上。秀星が下ってところかしら。」
無駄に綺麗な夜景を見ながら、泉は答える。
「泉。――彼が来たら君はどうするんだい?」
サラリと槙島の手が泉の髪の毛を撫でる。
その手を懐かしいと思わなくなったのはいつの事だったのだろう。
「知ってますか?私、幼い頃聖護さんのコト好きだったのよ。」
「あぁ。知っていたよ。」
「やっぱり?そして貴方は10年後、記憶を失った私の前に現れた。」
「あぁ。」
泉が淡々と言葉を紡ぐのを、槙島は黙って聞いていた。
「――そして3年前。貴方はまた私の前に現れた。今度は私の記憶も呼び起こして。」
「あぁ。約束したからね。――大きくなったら全て教えてあげる、と。」
「――何故。3年前、”あの人”を殺して私を生かしたの?」
槙島の口がゆっくりと動く。
泉は涙が自分の頬を流れて行くのを感じた。