第21章 裁きの門
――世界が咆哮を上げる。
「邪魔をしないで。僕とあの人を幸せにさせて。」
「――間違いないんだな?」
宜野座は朱からの通信に内心舌打ちをする。
『槙島かどうかは現在志恩さんが追跡中ですが、ノナタワーに武装集団が侵入した事は疑い様の無い事実です。タワーは攻撃を受け、電子的・通信的にも孤立しています。エントランスを突破した状況を見てもここの警備システムでは凌ぎ切れません。』
「――分かった。常守監視官!あと聞こえてるか、狡噛と縢!」
二人の返事を聞けば、宜野座は言葉を続ける。
「暴動はまだ続いている以上、タワーの方は俺達一係で対応する。良いか!もしも本当に槙島がいたら――。」
そこまで呟いた宜野座の脳裏にある言葉が蘇る。
『――槙島聖護の身柄を確保しろ。』
それは以前、局長から告げられた言葉だった。
「逮捕しろ!尋問の必要がある。必ず生きたまま捕まえるんだ!」
『――努力してみる。』
返って来た慎也の言葉に、宜野座はカッとなる。
「努力するのは当然だろう!重要なのは結果だ!それと狡噛!以前も言ったが泉を見付けても連行するなよ!日向泉は当局に今回の事件とは無関係と判断されている!」
その言葉に、慎也は眉根を寄せる。
「――どうしました?」
朱が問えば、慎也は首を振る。
「いや――、ちょっとな。――ギノ!泉を見つけたら俺はアイツを捕まえる。逮捕じゃない。自分の女を連れて帰るだけだからな。」
それだけ言えば、慎也は通信を切る。
「ギノさん達の到着待ちます~?」
「冗談よせよ。」
「ですよねぇ。」
縢と冗談を言い合っている間に志恩から通信が入る。
「敵は現在二手に分かれてる。上に5人。下に4人。」
「――槙島は?!」
『上。さっき最上階のエレベーターを降りたところ。――慎也くん!落ち着いて聞いてね。泉も一緒だわ。』
志恩が驚いたように声を上げるが、慎也はニヤリと笑った。
「――やっぱりな。」
3人も二手に分かれることになり、慎也と朱は屋上へと向かった。
望まぬ再会をする為に。