第7章 私が、金髪軍服の男に(わざと)ぶつかった話
「キャ!」
ドン。と廊下の角を曲がった瞬間、ありがちに誰かとぶつかった。
「すみません。大丈夫ですか?」
すい。と私の目の前に差し出された手は、指が長く男の人なのに綺麗な掌。
これが、彼の手の平なのね!
私は遠慮なく彼の手の平に自分の手の平を重ねる。
ちょっとぎゅっと握る事は忘れない。
「よいしょ。」
「きゃ。」
私を立ち上がらせるために強めに引っ張ってくれた。
もちろん、丁度いい塩梅の加減。
しかし、私はこのチャンスを逃さない。
ふらりと彼の胸に倒れ込む。
もちろん、わざと。
「わぁ。大丈夫ですか?足とか捻って無いですか?」
「あ、えっと。その…ちょっと。」
「ほんと、すみません。医務室行きましょう。」
「え、わ。あ、ありがとうございます!」
ちょっと右足首が痛い振りをすれば、彼は優しく私をお姫様だっこしてくれた。
無造作にまとめた彼の長い髪が、一瞬私に掠めいい匂いがした。
あぁ、し・あ・わ・せ。
「すみません。考え事をしていたものですから。」
「い、いえ。上官にぶつかってしまった私の方が…」
「たいしたもんじゃないですよ。」
そう。彼は約束の日以降、目覚ましく軍の内部で名を上げている超イケメン。
ビーネ・ヒューズ大佐。
キラキラと太陽に反射して輝く金色の髪、抜ける空の青の様な美しい瞳。きりりと整ったお顔立ち。柔和で甘いほほ笑み。その口調も優しく、誰にでも平等に接してくれる、仕事もできるパーフェクトマン。
彼を狙う女軍人は五万といる。
私は恐れ多くも彼に近づけない女どもとは違う。
積極的に彼にアピールして、私は彼の女になる!!
私はそっと、彼のたくましい胸に頬を寄せ痛がるふりをする。