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七色の雫 短編

第2章 ますますくりすます R18



コンコン。
と控えめなノックオンが響き、待ち望んでいた夕食とケーキが届いたようだった。

「こんばんは。」
「こんばんは。持ってきてやったぞ。」
「ちょうど食べたかったんだ。」

お客用に置いてあるテーブルにエドワードの持ってきてくれた夕食とケーキを広げる。
カツン!とひときわ高い音を立ててエドがとりだしたのはワイングラス。
大きなバスケットの底から、シャンパンだろうかボトルが出てきた。

「中佐がシャンメリー持ってけってくれたんだ。飲んでみようぜ。」
「さすが父さん。気がきくねぇ。」

カチン。と上品な音を立ててグラスを合わせる。
薄暗い部屋、クリスマスらしい装飾も何もないただの執務室で、おいしい夕食とケーキを食べる。
父さんのシャンメリーもおいしい。

「しっかし、急な夜勤なんてビーネも大変だな。」
「しかたないよ、真面目に軍人やってるんだ。国家錬金術師様とは立場が違う。」
「はっはっはー!お前も素直に国家錬金術師やればいいのに。」
「いいんだよ。僕はここでこうして、みんなと一緒にはたらいてるほうが楽しいの。」

わははー!ぎゃははー!とつまらない執務室でさみしい夕食を食べていると言うのに、なんだかすごく楽しい気分だ。

「でさー、って聞いてる?ビーネ。」
「あー?聞いてる聞いてるー。」

エドとなにか面白い話をしている。
でも、なんだか内容は右から左だ。

「なー、エドー。そのケーキくれ。」
「え?いいぜ。」

ほら。と皿を持ち上げたエドワードに手を伸ばし受け取ろうとしたが、なんだか視界がゆがむ。
気がついた時にはケーキは僕の服の上にべちゃりと落下していた。

「あーぁ。動くなビーネ今拭いてやるから。」

エドワードが立ち上がって、ティッシュや布で腹の上に就いているクリームをぬぐってくれている。
僕はそのクリームが唐突に食べたくなった。
エドの手をつかみ、クリームを指ですくって自分の口に運んだ。

「んー。甘い!」

そんな様子の僕にエドワードが一言。

「酔っ払ってんの?」

……そうかも。



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