第3章 人鬼
『…やっと…っ… 着いたね…んっ…帝、都… ッぅう〜 』
荘介「信乃… 大丈夫ですか? 顔が真っ青です。」
四獣神家のひとつ、尾崎家の狐たちに連れ去られた浜路を追い、帝都にやってきた信乃と荘介。
しかし信乃は、帝都へと続く汽車の中でも、帝都が近くなるにつれ顔色がどんどん悪くなり、最早真っ青と言うより生気すら感じられない。
教会関係者1「…貴様らが犬塚信乃と犬川荘介だな?」
教会関係者2「…なんと! 1人は女だったのか…」
教会の近くまで来ると、突然目の前に男達が数人現れ、口々に喋り出した。
男達が勝手に話していると、信乃達の目の前に一台の車が止まり、中から1人の青年が降りてきた。
教会関係者達「「「さ、里見様っ…!?」」」
『!! …里見、莉芳…』
荘介「?? …里見さん…? 」
里見の顔を見た信乃は、痛む身体で必死に意識を保ちながら、静かにそう呟いた。
この5年間、彼の事を忘れた日は無かった… いや、忘れる筈が無い。
信乃にとって里見莉芳は、生きる力をくれた、言わば命の恩人なのだ。
莉芳「…久しぶりだな、信乃。」
そう言いながら里見莉芳は、今し方自分が乗って来た車のドアを開け、信乃と荘介を乗せると浜路のいる四獣神家の屋敷まで連れてきた。