第11章 華の前世
リオ一族の元で生まれたエリズィエラ。
兄と妹がいて幸せな家族。
本当に幸せだったのかもしれない。
ラーラの頃には途絶えていた決め事がそのときはあった。
<瞳の色の違う者は、生け贄にする>
エリズィエラの瞳の色が変わり始めたのは23歳のとき。
水面に映った自分の瞳を見て驚愕した。
「瑠璃色…」
徐々にだが、瑠璃色へと変化し始めたのだ。
これが知れたら殺される。
そう思い、家に閉じこもるようになった。
生け贄となる者は、一定の周期で生まれるとされていた。
いてもいいはずの生け贄がいない。
長は捜せと命令を下した。
見つけた者には、幸せを与えると公約して。
兄アンバイドも、妹ジェイディアも幸せと言う言葉に泳がされた。
そして中々顔を見せないエリズィエラを疑った。
実の兄弟だろうと容赦しなかった。
2人はエリズィエラを引き渡した。
だがこのとき、大きな間違いを犯す。
生け贄が生まれたのは300年前。
そのときに何が起きたか、書物に記されていなかったのだ。
瑠璃色の瞳の女は、女神の使い。
殺せば天罰が下る。
アンバイドとジェイディアは2つの双剣にされた。
酷い憎しみを持って閉じ込められた。
それでも生け贄となるエリズィエラ。
宮殿の地下へ連れていかれた。
祭壇に乗せられて、手足を角に繋がれた。
泣き叫んで懇願しても、祭祀は聞き入れない。
そして呪縛のような言葉を発した。
「これは運命だ」
なんて残酷なんだろう。
こんな運命背負わせたのは誰?
あぁ、私は可哀そう。
心臓に短剣を突き刺され、私は死んだ。
穢れることなく死んだ。
女神が私の怨霊を剣に入れてくれた。
兄と妹とは違い、いつでも出られるようにしてくれた。
それからずっと、私は自分の生き写しが生まれるのを待った。