第3章 仕事のしかた
午後15時過ぎ。
お泊りセットの鞄を抱えて、紗希はパトカーに乗っている。
将軍と妹君のそよ姫、そしてその友人が、某旅館へ宿泊するらしく、その護衛に向かう最中のこと。
「トシ、やっぱり紗希ちゃんを現場に連れて行くのは危険じゃないのか」
後ろの席で、局長と、副長がそんなことを話し出す。
「屯所において行く方があぶねーだろーが。総動員でガラ空きなんだぞ。攘夷志士にでも侵入されて、人質にとられたらどーすんだよ」
「見捨てりゃあいいじゃあねーですかい」
運転しながら沖田が余計な口をはさむ。
むっとしつつも、紗希は黙って大人しく助手席に座っていた。
「だからってよお、現場で襲撃にでもあったら」
「だれかに預けてくるわけにもいかねーだろ。子供じゃねーんだから」
副長も面倒くさそうなのが態度に出ている。
「そうだ! お妙さんのところに泊めてもらったらどうだ? 紗希ちゃん! よし、総悟お妙さんのところに寄っていこう」
「近藤さん。近藤さんの話をあの姐さんが聞いてくれるとは思えねーんですが。だいたい、こっちは送迎まで将軍様方にべったりせにゃなんのですぜい? んなとこに寄ってる時間なんかありやせんよ」
「じゃあいっそのこと万事屋に」
「奴らに借りつくんのだけはごめんだ」
副長が間髪いれずに言った。
もう……大人しくしてればみんなして……。わたしはどれだけお荷物なのよ……。
苛々して、つい沖田を睨む。怖くて顔は見られないから、太腿のあたりを。
「おい、態度わりぃなァ。人に運転させて悠々と助手席のってる分際で」
うう……。
「総悟、そう言ってやるな。どうもおまえ、最近紗希ちゃんにきつくあたるな」
「性玩具のくせに、役目を果たそうとしないからでさァ」
「総悟!」
「せ、せいかんぐじゃないもん!」
反論する声がひっくり返ってしまう。
泣きそう。
沖田隊長なんて嫌い。
この間、命令を無視して(ほとんど銀時が強引に押し切ったのだけれど)屯所に戻らず、銀時とデートをしてから、沖田からの風当たりがさらにきつくなった。