第27章 ウェディングプランナー
離れるまでに、
たくさん思い出を作りたかったけど、
お互い、季節的にも慌ただしく、
加えて俺は、転勤の準備や引っ越しで、
あっという間に別れの日が来てしまった。
…東京のバレー仲間には、
転勤のことは言ってない。
それは…
『黒尾さん、
夜久君や研磨さんに言っていかなくて、
ホントにいいんですか?』
『あっちの生活が落ち着いたら言うよ。
別に東京いたって滅多に会わねーし。』
出発の日に、
ギリギリまでアキと
手を繋いでいたかったから。
アイツらが来たら、
絶対、アキは遠慮して見送りに来ない。
…アキのために出来ること、
それくらいしか、思い浮かばなかった。
荷物を向こうに送り、
こっちの部屋を引き払って2週間は、
アキの部屋で暮らした。
わずかな間だったけど、
共働き夫婦の新婚生活みたいで
楽しい思い出になった。
"おでん屋 大将"にも二人で顔を出した。
大将は
『アキちゃんのことは俺に任せとけ!
アキちゃん、
淋しいときはいつでも俺が…イヒヒ…』
なんてふざけて言いながら、
でもアキが席をはずした時には
『黒尾さん、
連絡だけはこまめにしてやんなよ。
アキちゃん、きっと当分遠慮して
自分からは連絡してこないぞ。』
…なんて気にかけてくれて。
そして今、俺たちは、
新幹線のホームにいる。
『アキの実家って、どのへん?』
『黒尾さんの住む街からだったら、
高速バスで五時間。』
『え?新幹線で行けねーの?』
『九州で唯一、
新幹線が通らない県、なんです。』
『向こういる間に、
ご両親に挨拶、行きてぇな。』
『夏にしましょ!海、見てもらいたい!』
…何か楽しい話をしていないと
気が狂いそうだった。
アキを置いて、一人で。
アキのいない所へ、一人で。
『アキ…落ち着いてんな?』
『私…黒尾さんに出会うまで、』
笑顔が、遠くを見つめる。
『もう、一生一人のつもりだったんですもん。
それなのにこうやって、
もう一度、恋させてもらって…
そんな人に出逢えただけで、充分、幸せです。
離れるくらいで泣いたら、
贅沢で、バチ、あたります。』
…もうちょっと、欲張れよ。
俺達まだ、始まったばっかりだろ?