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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第27章 ウェディングプランナー



間もなく新幹線が到着、
…というアナウンスが、
ホームに流れてきた。

…握る手に、力を込める。
もう、ほんの何分か後には、
離さなくてはならない手。

当分、触れることの出来ない手。

俺を、未練の底から救ってくれた手。

飾り気のない、でも強い意思をもつ手。


『黒尾さん、ちゃんとご飯、食べてくださいね。』

『あぁ。アキも、仕事しすぎるなよ。』

『黒尾さんがいなくなったら、
仕事しかすることないです(笑)』

『じゃ、せめて、休みの日はちゃんと休めよ。』

『はい。…黒尾さんも、無理しないで。』

『俺は、大丈夫。
手抜きとサボりは自信あるから。』

『…黒尾さん、飲み過ぎないで。』

『おぅ。アキも飲み過ぎんなよ。』

『黒尾さん、』

『ん?』

新幹線がホームに入ってきた。
ブレーキ音、アナウンス、人のざわめき…
いっきに空気がまだらに動き始め、
アキの声を溶かしていく。

『黒尾さん、私、』

列が動き始め、乗降口は、目の前。
手を、離さないと。

『大丈夫だから、』

ギリギリ指先まで触れていた
手の感触が、なくなる。

『心配しないで。』

列の流れに押されて車輌の中へ。
すぐに窓際の席に座り、アキの姿を探す。

いた。
笑顔で手を振ってる。
いつだって、自分の気持ちは後回し。

ばぁか。
大丈夫、じゃねぇくせに。
心配しないで、じゃねーよ。


心配させてくれよ。
たまには、泣き顔も、見せろよ。

…じゃねーと、
俺が先に泣くわけにはいかねぇだろ?

動き始めた窓の外。
どんどん小さくなって行く姿。
やがて、町並みがワープのように
後ろへ後ろへと流れていき始める。



もう、会いたい。

離れて1秒後には、
もう、会いたい。
すぐ、会いたい。



"異動なんてウソだよ~!"
って言って
"黒尾さんのバカ、バカ!"
と、プーッと怒った顔、させたい。

怒って後ろを向く背中を
"ごめんごめん"って抱き締めて
許してくれるまで、キスしたい。



なんだろな、この気持ち。
どんな言葉なら、伝わる?



あぁ、そうか。
もしかしたらあの言葉は
こんな時に使うのかもしれないな。

今まで"ウソっぽい"と思ってたのは、
きっと、こんなに誰かを思ったことが
なかったからなんだ。



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