第27章 ウェディングプランナー
『でも、やっぱ、あれだな。』
大将は、
当たり前だけど、と前置きして
ハッキリ言った。
『アキちゃんと、
じっくり話し合うのが一番だな。
女の30ってさ、いろいろ考える時期よ。
結婚とか、出産とか、キャリアとか、
男と違って、全部をいっぺんに、って
わけにはいかねーから。
男には決められねぇ、
その人なりの優先順位があるはずだよ。
もちろん、黒尾さんがどうしたいかも
ちゃんと伝えてさ、
その上で、あとはアキちゃんの決断を
尊重すんのがいいんじゃねーかなぁ。』
…やっぱり、そうだよな。
俺はアキを連れていければ万々歳、だけど
そしたらアキは確実に1つ、失うものがある。
つきあう時、
あんなに思ったじゃねーか。
"彼女が
夢も仕事も手にいれるにために
俺たちは出逢ったに違いない。
俺が両方、叶えてやる。"って。
思うだけなら、簡単だ。
それを実現させられるかどうか。
アキがどんな決断をしても
迷わず受け止められるくらい
まずは俺がしっかりしないと。
『黒尾さん、心配すんな。』
大将が、余裕の笑顔で言った。
『今はそれで頭が一杯だろうけど、
結婚したら、そうやって二人で話し合って
決断しなきゃなんねーこと、山のようにあるぞ。
大事なんだろ、アキちゃんのこと。
結婚生活の練習だと思ってさ。
自分の意見のぶつけ合いじゃなくて
お互いの気持ちのやりとりで話しな。
…あんた達なら、心配ねーと思うけど。』
あぁ、やっぱり、
場数踏んでる男は、格好いいなぁ。
『大将、ありがと。
なんか、ちょっと、覚悟きまったよ。
…また来るな。』
店を出る。
ここ、俺にとって
すごく大事な場所だな。
夜っ久んの相談にもここでのったし、
アキの家に初めて行ったのも
ここで飲んだのがきっかけだった。
アキに頼まれた焼酎を届けた時は、
大将に説教されたっけ。
俺たちのつきあいを知ってる
数少ない一人が、大将。
いろんな経験して、
誰かの相談にのれるような男に、
俺もなりてぇな。
…そのためには、
まず、目の前の一人を
幸せにしてやんねぇと。
自分を奮い立たせて、
一人で夜道を歩いた。
…右手を繋ぐ人がいなくて…
久しぶりに、
ポケットに手を入れて、歩いた。