第27章 ウェディングプランナー
『上等じゃん。
じゃあやっぱり、つきあおーぜ。
俺だって、あんたのこと悲しませない
自信、あるし。』
顔を覗きこむ。
もう
スッピンの顔を隠そうとはしない。
1つ、心を開いた証拠。
信頼は、
一つ一つ積み重ねていくしかない。
今日が始まりだとしたら
1年、5年、10年…
長く一緒にいて、積み重ねていく。
『でも、まずは、』
肩を抱き寄せ、
洗いたて、乾きたての髪に
キスをした。
『一眠りしよう。
一緒にいられる時は、
出来るだけ近くにいようや。』
うん、と
うなずく彼女。
気が緩んだのか、小さなあくび。
二人でベッドに横になった後、
半分、閉じかかった目で
彼女がつぶやいた。
『黒尾さん、私、
30歳になってよかったです。
急に何かかわるわけじゃないだろうけど…
勇気出して電話かけた自分を
褒めてあげたいくらいです。』
ほんとだよ。
人生の大事な日に
俺に会いたいと思ってくれてよかった。
あ、そうだ。
呼び方、聞こうと思ってたんだ。
『なぁ、あんたのこと、何て呼んだらいい?』
『…』
『おい、』
…眠ってる。
安心した顔で、ぐっすり。
まだ名前で呼んだこともないのに
俺の中ではもう、結婚するつもり。
黒尾 アキ…うん、悪くねぇな。
自分がこんな風に
結婚について
真剣に考える日が来るなんて、
本当に、
今まで一度も思ったこと、なかった。
…
その時、
一瞬だけ思い浮かんだのは
トーコ。
俺、お前と出逢ったから
わかったよ。
どんなに好きだと思っても
やっぱり最後に選べるのは
一人だけだな。
お前は旦那を選んだし、
俺は、彼女と出逢った。
トーコとの別れがなかったら
彼女とは、
こうならなかったかもしれない。
もう、完全に想い出。
愛しさも痛みも、
乾いた過去になった。
不思議だ。
顔、ぼんやりとしか思い出せなくて。
はっきり浮かぶのは、
あの日見た、後ろ姿。
俺のトーコではなく、
誰かの妻で、誰かの母、としての後ろ姿。
幸せそうで、よかった。
…今になってわかる。
彼女が俺に
『トーコに幸せな後ろ姿を見せろ』と
言った意味。
俺も、ちゃんと次に向かって歩いてるから。
…ありがと。
お互い、幸せになろうな。
深く息を吸って、
そのまま、眠りについた…