第27章 ウェディングプランナー
『なんか、喋ってくださいよ。』
『あ?』
『…このまま、朝が来ちゃう。』
『いいじゃねーか、それでも。』
『黒尾さんの声、聴いてたい。
次、いつ会えるかわからないから。』
…なんか、
言うことが急に可愛く聞こえるのは
気のせいだろうか。
彼女がリラックスしたから?
それとも俺の彼女に対する気持ちが
かわったからか?
頭の中が散らかったままだったから
口から出た言葉は、超 ストレートで…
『あのさ…なんで結婚式の仕事、
そんなに熱心に出来んの?』
『唐突ですね(笑)それって、もしかして』
ハッ…
これって、取り方によっては
すごく失礼な質問、では?
誤解すんなよ、そんな深い意味は…
『"あんた、自分が結婚出来ねぇのに
人の結婚、祝ってる場合じゃねぇだろ?"
的なニュアンス、てんこ盛り、ですか?』
…ほらぁ、
誤解したぁ。
俺、バカ!
傷つけた?
…あ、そう思うこと自体が失礼か?!
『…いや、そんな深い意味は…』
言い訳がましくて情けない…
でも彼女は、俺の心配に反して
カラッと言った。
『多分、むしろ自分が結婚出来ないから、
っていうのが理由なんです。』
迷いなく続く、言葉。
落ち込むわけでも
恥じるわけでも
悲しむわけでもなく、
明確に、キリッと。
『私、小さい頃、
"将来の夢は?"って質問されて
"お嫁さん"って答える子を見ると、
夢がないなぁ、って思ってたんです。』
『なんで?』
『お嫁さんって、
女性はみんななれると思ってたから。
夢っていうのは、
例えばアイドル、とか看護師とか、
保育士とか、宇宙飛行士とか、
そういうのを言えばいいのに、って。』
『へぇ。』
…話の向かう先が、見えない。
でも言葉が迷いなく出てくるから
黙って聴く。
『だけど、大人になってわかったんです。
誰でもお嫁さんになれるんじゃない、って。
ちゃんと魅力的な女性になる努力して
好きになってくれる男性を探す努力して
それでやっとなれるんだ。
"お嫁さんは立派な夢"なんだ、って。
そんで気づいたんです。
私、夢を叶える努力をしてこなかった。』
…彼女の横顔。
やっぱり、スッキリしてる。
相当、それについて考えてきたに違いない。
悲しみや後悔を繰り返しながら
唯一"裏切らない"仕事を続ける意味を。