第27章 ウェディングプランナー
うちに着く。
どうしていいかわかんないで
自分の家なのに固まってる私。
なのに黒尾さんは、
まるでよく知ってるみたいに
『風呂、まだだろ?入ってこいよ。』
…だって。
あのー、ここ、
私の家なんですけど。
『スーツ、かけさせてもらうな。』
壁際にかけられる、紺色のスーツ。
うちに、男の人のパーツが加わった。
…なんだか、新鮮な雰囲気だなぁ…
そう思って見てたら、
『ん?風呂、一緒に入って欲しいのか?』
『へっ?違いますっ!』
…このエロ男!って言おうと思ったら、
黒尾さんはすっごく優しい笑顔で
『…してほしいこと、何でも言えよ。
誕生日のお祝いだ。
出来ることなら、何でもしてやっから。』
…これも、モテ男のテクニックなの?
もう、ホント、困る。
私程度の恋愛経験じゃ、
振り回されっぱなしで…
どんどん、好きになってしまう。
…何時間か後にフラれるとしても、
それでも、"好き"が止まらないじゃん…
と思ったら、今度は、ニヤリ。
いつもの黒尾さんの、顔。
『服、脱がせてほしい、とか
体、洗ってほしい、とか、
裸でベッドまで運んでほしい、とか
なんかリクエスト、ねぇか?ん?ん?』
ボフッ。
クッションを投げつけたら、命中した。
『イテっ…ナイスコントロール(笑)』
『絶対、覗かないで下さいよっ?!』
『ごゆっくり。
キレーキレーにしてこいよ。
あんまりゆっくりだと俺、
眠っちまうかもだけど。』
『どーぞどーぞ。むしろ、寝てて下さい!』
バタン、と洗面所のドアを閉めた。
鏡に写った自分の顔。
30歳。最近、よく、思う。
20代前半の花嫁さんの
ハリや輝きに比べると
明らかに、失ったものが多いな、って。
…素顔になっても、いいのかな?
トーコさんみたいに美人じゃないし。
『黒尾さん…』
ドアを少しだけあけて声をかける。
荷物を片付けてるらしい黒尾さん、
こっちを見ないで声だけで返事。
『ん?』
『…素顔、NG?』
『誰の?』
『…私。』
一瞬の間の後、こっちを振り向いて。
ドアから半分だけ見えてる私の目に
視線をあわせて。
『寝るとき素顔、当たり前じゃね?』
『そうだけど…』
『フツーにしろよ。』
…あなたがここにいることが
フツーじゃないもんで。
私もフツーになれないんですよっ!