第27章 ウェディングプランナー
『…早く、言えよ…』
『いや、
別に祝ってほしいとかじゃなくて、
誕生日とかクリスマスとか、
あたし、ホントにどーでもいいんです。
でもほら、29から30になるって
なんかちょっと、大変化っていうか、
この先10年で、一番、貴重な日かな、
って思って。
せっかく黒尾さんが
"誰かと一緒にいたい日に電話して来い"
って言ってくださったから、
この日にそのチャンスを使おう、って。』
『バカヤロ…急に言われたって
何にもしてやれねぇじゃねーか。』
『だーかーらー、
誕生日の間、あと一時間半だけ、
飲みの相手、してほしいだけですって!』
なんでそんなに甘え下手なんだ?
あんたがよくても、
俺が許せねぇじゃんよ。
…でも、ここでそれを言ってしまったら
また、彼女が後悔するに決まってる。
甘え下手なりに、これでも、
今、精一杯、
甘えようとしてくれてるわけで。
こういう時は…
跳ね返さないで受け止める。
『わかった、任せとけ。
じゃ、まずは乾杯、しよーぜ!』
スナック菓子とコンビニのケーキ。
30歳の誕生祝いにしたら、
あまりにも質素だけど…
質素だからこそ、楽しい時間に。
"贈り物は、相手を思う時間が大切"
彼女が言った言葉で、
俺が忘れられない言葉。
今、何もあげられるものがないから
時間そのものを、贈りたいと思った。
缶ビールをゴツンとぶつけて
乾杯する。
勢いよく飲んで
ビールの缶をテーブルに置くと、
すぐに。
『ほら、アーンしろ、アーン。』
あれこれ考えたり
思い出したりする暇もないくらい
すぐに。ずっと。次々と。
笑わせたい。
スナック菓子を2枚、
背中合わせに重ねて
彼女の口に差し込む。
アヒルのくちばしみたいで。
『写メ、とらせろ!』
フガフガ文句を言いたそうな顔を
1枚、写メにおさめたら、
今度は俺も同じことをして、並んで写メ。
…そのまま横を向いて、
スナック菓子のくちばしで
カサッと渇いたキスをした。
ポロリ…彼女の口からくちばしが落ちて
『あー、』
落ちたくちばしは俺の口へおさめる。
それを見てホワッと赤くなる頬。
まだ。
もっと
もっと。
驚いたり
感動したり
嬉しかったり
ドキドキしたり
恥ずかしかったり
忘れられなかったり
そんな時間を贈らせてほしい。