第10章 壊れた壊した壊された ー神崎颯馬ー
そして、本番の日。
幼稚園児やちびっ子達が集まる中、劇は始まった。途中までは良かったんだけど…魔女を倒すシーン辺りからおかしくなった。
「魔女を崖から落とせーっ!」
俺のセリフの後に、月永サンが魔女を舞台の外に放り投げる…のだが、それを魔女役の日々樹サンが華麗に交わした。
「フフフッ!まだまだこれからですよ、子人達!!」
「遅くなってしまった、姫!」
今頃は神崎サンの出番なのだが魔女はまだくたばっていない。
「王子、すみません…一緒に魔女を倒してください!!」
「助太刀いたそう!!!」
マッシーのナイスな機転で何とかなった。しかし、どういうつもりだ。
「残念ですね、白雪姫はすでに私の手の中!!」
舞台の脇で寝たふりをしていた姉ちゃんを肩に担いで日々樹サンは笑う。
何だこのアドリブの嵐!!
「姫を返せ!忌々しい魔女めっ!てやぁぁぁっ!!」
神崎サンが刀ではなく、作り物の剣で勇ましく立ち向かう。ナイス神対応っ!?
「ひ、ひゃっ!」
それに驚いた姉ちゃんが思わず声を上げた。これには日々樹サンも目をぱちくり。
「あーっ!!咽に突っかかってたりんごが取れて白雪姫が目を覚ましたーーっ!!」
えぇい、もう何もかも変えてしまえ!!
「姫、そいつは悪い魔女です。」
「今王子が助けてくれるぞっ!よい子の皆、王子の応援をしようっ!!」
「そーれっ!頑張れ頑張れ王子!!」
「負けるな負けるな王子!」
皆ノリいいなっ!氷鷹サンでさえのったよ!
ちびっ子達も負けじと叫び出す。最後には日々樹サンがやられたふりをして、皆がホッとしかけたとき。
「ま、まだです…姫に、そこから動けない魔法をかけまし……、た………」
ステゼリフを吐いて舞台から出て行く。いや、なんちゅー爆弾落としてくれてんの。
姉ちゃんはその場に立ったまま動かない。さすがにフォローのしようがねぇ…と思っていたが、俺はえぇいと即興で昨日やったゲームのストーリー風にしてしまおうとした。
「姫、安心してください。魔法をとく方法があります。」
「な、何だ何だ!?どんな方法だ!?あ、待って考えるから答えないで!」
素が出てますよ月永サン!!
しかし、なぜかちびっ子達にはツボみたいで皆ドッと笑い出した。