第10章 壊れた壊した壊された ー神崎颯馬ー
ここからは、神崎サンと姉ちゃんから後で聞いた。(いちゃつかれてマジでムカついたけど)
「あんず殿、良かった無事か」
神崎サンが姉ちゃんを見つけたら、姉ちゃんはオレンジジュースの入ったペットボトルを持って廊下を普通に歩いていたらしい。
「颯馬、くん…」
しかし、やはり普通ではなく姉ちゃんは神崎サンを見るなりブワッと目に涙をためたらしい。(これを話してくれたときに泣いているあんず殿も可愛いだとかでも泣き顔は見たくないだとか言われた)
「安心召されよあんず殿!我が側にいよう!」
神崎サンは安心させようと姉ちゃんの手を握ったらしい。氷みたいに冷たかったって言ってたね。(このことについては家でいかに神崎サンがかっこよかったかを珍しく姉ちゃんに熱弁されることとなる)
「あり、がと…う」
「うむ!」
俺、本当に電話鳴らさなくて良かったと思う。こんな雰囲気に電話の着信音は似合わないだろう。
しかしそんな雰囲気で、一度雷が光ったらしい。ゴロゴロッとなる音がやけに近くに聞こえると思ったら、窓が開いていた。
神崎サンが閉めようと姉ちゃんの手をはなしたらしい。
これ聞いたとき俺、あぁやっちゃったなって思った。姉ちゃん、雷の日はちょっとでも一人になったらダメになっちゃうから。
まぁこれ、多分俺のせい。
「あんず殿、大丈夫か……」
神崎サンが振り向いた時にはもう遅く、姉ちゃんはその場にしゃがんで耳をふさいでガタガタ震えていたのだとか。
「あんず殿!!」
その声を姉ちゃんは嫌がった。耳をふさいで神崎サンから数歩下がる。(この時の神崎サンの計り知れない悲しみは語っている途中に半泣きになっていたことからわかる。)
でも神崎サンは負けじと姉ちゃんの耳をふさいでいる手を掴んだ
「我は雷ではない。恐がらなくていい、あんず殿。」
姉ちゃんはポカンとしたと同時に、何だかすごくホッとしたらしい。
その後、姉ちゃんを神崎サンが姫抱きをして演劇部の部室に帰ってきて俺が飛び蹴りくらわすわけだけど。