第16章 目を冷まさない大切な人
美琴side
誰かがずっと私に話しかけてくれている。
その人のことを大切に思ってるんだけど、
誰かが思い出せない。
暗闇の中、その声が私の前に暖かい光を照ら
してくれる。
貴方は、誰なの?
貴方は私のなんなんだろう?
とても懐かしい人たちの声が聞こえてきた。
その人たちは私が目を冷ますことを心から
望んでいると分かって、思いきって手を伸ば
すと、視界が明るくなった。
周りを見ると、私の友達が心配そうな顔で私
を見ていた。
そして、私が起きたことに喜んで色々と話し
かけてくれる。
だけど、一人だけ誰か分からない男性がいた。
私に一生懸命 声をかけてくれていた人だと
分かったけど、彼のことを覚えていない。
それを知って、彼は病室を飛び出してしまった。
私は訳がわからなくて、
「涼介、今さっきの男性なんだけど知ってる
気がするのに、分からないの!」
「彼の名前と私とどんな関係だったのか教え
て欲しい」と言うと、文哉が
「さっきの男性は、優輝」
「大学からの美琴も含めて、俺たちの友達だよ」
「そして、久しぶりに再会して優輝は美琴
を好きになっていた」
「美琴も優輝に甘えていたよ」
「涼介と優輝と美琴の三角関係だった」
「美琴が巻き込まれた事件で、美琴を庇って
負傷して、それを美琴が見たことが衝撃で
忘れたんだと思う」と説明してくれた。
「私はとても彼を傷つけてしまったんだね」
「謝りたいけど、許してもらえるかな?」
文「許してくれるけど、自分のことを忘れら
れたショックは強いと思う」
「私はどうしたらいいの?」と思うと何もか
も分からなくなって、意識が遠退いていった。