第8章 再会
その夜、夕飯の後に、加州がいきなり現世へ行こうと言い出した。
「じゃあ、ちょうど明日なら昼過ぎから出掛けられるから、明日ね!絶対だよ、」
「分かった。じゃあ、明日ね。」
加州が、現世へ買い物へ行きたいと言うのはよくある事だったので、なんの疑問もなく、次の日を迎える事になった。
次の日、居間で加州を待っていたが、中々来ない。
呼びに行こうかと思った時、加州が着物のまま表れた。
「もぉ!現世へ行くんじゃなかったの?」
「現世へは行くよ。でも、俺とじゃないんだよね。」
春香は、どう言う事なのか、分からない。
その様子に、加州は落ち着いて話をする。
「あのさ…今日は、一期と行ってきてよ。」
「…!無理、だよ…」
春香は、一歩後ろに下がり、力なく答える。
加州は、逃げられない様にその手を掴んで、真剣な表情で話を続ける。
「このままじゃ、ダメだよ。本丸の中は、誰か居るからさ。春香が逃げちゃうから、話なんてしないでしょ?だから、ちゃんと話してきな?」
春香は、困惑している。
「…ミツは…」
「何?」
「ミツは、それでいいの?」
そう聞かれて、言葉に一瞬詰まったが、加州はちゃんと答える。
「…いいも何も、そうしなきゃ、ダメだって思う。…帰ってくるの、待ってるから、ちゃんと向き合ってきな。」
真っ直ぐな瞳で、そう言われたら、覚悟を決めるしかない。
「…分かった。行ってくるね。ミツ。」
「うん。いってらっしゃい。」
加州は、少し悲しそうな表情で言う春香に、精一杯の笑顔で送り出した。