第8章 再会
「…!」
聞き覚えのある声がする。
それはとても懐かしく、聞きたくて仕方なかった、愛しい声。
「う…う、そ…なんで…」
春香は、目を見開いて、声の主、一期を見ている。
後ろから、慌てて和泉守と鯰尾、骨喰が走ってくる。
「遅かったか!加州!主を部屋まで連れて行け!今すぐだ!」
呆然としていた加州は、和泉守の言葉に我に返り、馬を今剣に預けて春香に寄っていく。
その様子など春香には全く見えず、ふらふらと、歩いて一期の方へと向かっていく。
「一期…」
「はい。私は、一期一振。粟田口吉光の手による唯一の太刀でございます。貴方が、私の主となられた方ですね?以後、お見知りおきを。」
一期はにこっと笑い、丁寧にお辞儀をした。
その状況に、春香の足は止まった。
「春香…っ!今日は、疲れただろうから、部屋戻ろうか。」
加州が傍まで行くと、春香は困惑した表情で、今の状況が飲み込めない様だった。
今すぐに、強引に外へ連れ出したい気持ちを抑え、加州はそっと優しく、春香を部屋へと連れて行く。
「いち兄、ごめんね。主はちょっと疲れてて…また今度、ちゃんと話せばいいと思うから。」
不思議そうな顔をしている一期と春香の間に割り込む様にして鯰尾が主の傍に行かない様にと止めた。
「そうだったのか。では、また改めて挨拶をしようか。鯰尾。ここには、他に誰がいるのか、教えてくれないか?」
春香は、加州に促されて歩きながら、後ろの一期の会話を聞いている。
本当に、記憶は消されてしまうんだと、この状況に絶望を覚えた。