第7章 建前と本音
「俺って…可愛くないよね…」
「は?朝から何?」
加州は、居間の机に突っ伏して、目の前に座っている安定に話しかけた。
何の事か分からない安定は、正直、迷惑だと言う顔をしている。
少し離れた所では、朝から元気な短刀達がきゃっきゃと騒いでいる。
と、鶴丸が朝食を摂りに入ってきた。
加州は不機嫌さを明らさまに出すと、顔を逸らしてしまう。
鶴丸は、苦笑いをして少し離れた所へ座った。
「何?鶴丸さんとなんかあったの?」
「…別に…」
安定は、確実に昨日の事で何か揉めたと確信しているが、それ以上は聞かなかった。
しばらくすると、三日月と小狐丸、なども入ってきて、賑やかになる。
と、そこへ堀川が顔を覗かせて、朝食を運ぶのを手伝うように頼んだので、短刀達は楽しそうに台所へと向かっていった。
「皆、おはよう!」
朝から元気そうな顔で、春香が中に入ってくる。
加州は、顔を上げたものの、ちゃんと顔を見れず、そらしてしまった。
春香も、加州を見ると、顔を少し赤くして、いつもなら一番に話しかけてくるのに、今日は和泉守の方へ行ってしまった。
「…やっぱり、なんかあったの?」
安定は、あえてもう一度聞く。
「俺って、やっぱ、可愛くない…」
こちらも少し、顔が赤い様だ。
安定の口からは、ため息がこぼれた。
珍しく、山姥切が朝から居間に顔を出した。
それを見つけて、春香が嬉しそうに山姥切の所へ行った。
「おはよう!まんば!今日は朝食にちゃんと顔を出してくれてんだね!」
嬉しそうな春香の様子に、少し照れながら、ふと、山姥切は何かを見つけた。
「主、首に赤い跡がついてるが、どうしたんだ?」
「へっ!?」
慌てて春香が、首を隠した。
と、同時に
がたん‼︎
と加州が音を立てる。
慌てて、また座り直すが、春香とは、お互い気にしあっている様だ。
加州の目の前では、安定が白い目で見ている。
「はぁ…俺ってやっぱり、可愛くないって思ったでしょ?」
「いや、思ってない。」
加州が、安定の言葉に顔を上げた。
「…なんで?」
「軽蔑したから。」
ため息混じりに言われ、加州もため息をつく。
「そっちのがキツイ…」