第7章 建前と本音
「ねぇ、春香…俺…今拒否されなかったら、止めれないよ…?」
「うん…でも…ミツなら…いいよ…」
「さっきはダメって言ったじゃん…」
憎まれ口を叩きながらも、受け入れられてしまっては、もう止められなかった。
激しいキス。
体に指や口で触れば、思った以上の反応が返ってくる。
自分を感じてくれている顔は、妖艶で、美しい。
抱きしめれば抱きしめるほど、体は熱くなるばかりで、このまま壊してしまいそうになる。
名前を呼べば、呼び返してくれる。
そんな彼女に、加州はどんどん溺れていった。
何度、抱き合ったかは分からない。
気付けば、加州の腕の中では春香が眠っていた。
その目には、涙の跡が付いている。
加州は、今更ながらに罪悪感に襲われてしまった。
ー夜伽か?ー
いつぞやの、三日月の言葉が蘇る。
結局、弱った所に酒の勢いで、壊してしまいそうなくらい、抱いてしまったのだ。
外は明るみ出していた。
加州はそっと寝ている春香に口づけを落とし、起こさない様に、部屋を出た。
春香が朝起きると、もう加州は居なかった。
昨夜の出来事は、夢なのかと思ったが、腹部の痛みが、現実であったことを教えている。
自分のしてしまった事に、後悔が襲ってくる。
鶴丸と飲んでいた時に、自ら相当飲んでいたと自覚がある。
その酔いに任せて、打ち明けてくれた加州の気持ちにつけ込んでしまったのだと春香は思った。
外からは、堀川達の作る朝ごはんの良い匂いがしてきている。
それに気づいた途端、お腹がきゅっとなった。
こんな時でも、お腹は空いてくる。
そんな自分に苦笑いをして、朝風呂に入って、朝食をとる事にした。