第7章 建前と本音
「何やってんの!?鶴丸さん!」
加州はとっさに春香を自分の方へ引き寄せ、背中でかばいながら、今にも切りかかりそうな状態である。
怒り心頭、と言ったところだ。
「ミ、ミツ。お酒を飲んでただけで、何でもないから、そんなに怒らないで…?」
後ろから春香がフォローするが、それが余計に加州を怒らせる羽目になった。
「何でもない?キスされておいて、そんな事言うんだね。じゃあ春香は、鶴丸さんの事がが好きなわけ?なら、俺は止めないけど。」
「そう言う訳じゃ…」
加州がこんなに怒っているのを、春香は初めて見たので、どうしていいのか分からない。
鶴丸ははあっとため息をつき、
「まったく、ちょっとした、酔った勢いってやつだよ。俺が悪かった。主を責めるのは間違ってるぜ。じゃ、俺は部屋に帰るとするか。」
立ち上がって、酒の乗ったお盆を持って鶴丸は部屋へ戻っていった。
それを確認した加州は、春香の腕をぐっと掴み、ずんずんと歩いていく。
「あの、ミツ?腕、痛いよ…」
その言葉に耳も傾けず、縁側をどんどん進み、春香の部屋まで来た。