第63章 【烏と狐といろいろの話　その4】

「ちゃんと繋いどかんと俺がまま兄くんに怒られるんやて。」
「すみません、そうでした。」

呟いて美沙が握っていた手をそっと開き、恐る恐る侑と繋ぎ直した瞬間だった。

前方から物凄い声が上がった。

二人より前を歩いていた集団の一部が仕掛けに驚いて思わず叫んでしまったらしい。

「てっめーっ、黄金、耳元で叫ぶなっ。」
「すみません、主将っ。さっきから不意をつかれまくりでっ。」

侑に引けを取らない、下手したらもっとでかいのも含むその野郎共がわあわあ言い合い出したのを聞いて美沙は全身の血の気が引くのを感じた。

「ちょっ、ままコちゃん、急にどしたん。」

異変を察知したか侑が囁く。

「お化けとちゃうとこでプルプルやんっ。」
「す、すみません、前歩いてる人ら見てたらなんかとてつもなく妙な予感が。」
「え、何何。」

慌てる侑に美沙は申し訳ない気持ちを込めて呟いた。

「やっぱりなんか引き寄せてもたみたいです。」
「うわ、マジかあ。あの前歩いとる奴らか。」
「はい。で、とりあえず、あの、お手数かけて申し訳ないんですけど、あの人ら追い越さん感じで行きたいんです。」

申し訳なさが極まって俯く美沙だが、侑ははいはい、と笑って言う。

「可愛いままコちゃんの頼みや、任しとき。」
「ホンマすいません。」

危うく別に可愛くはないといったことを言いかけた美沙だが指摘されたことを思い出し、そこは飲み込んだ。