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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第63章 【烏と狐といろいろの話 その4】


というわけで、周囲では同じタイミングで入館したお客達が悲鳴を上げまくっているわけだが、美沙は侑に手を握られたまま楽しく進んでいた。

「何これ、映像すごい。これが噂のプロジェクションマッピングかな。」
「せやな、きっと。」
「なんか音がぐるっと回って聞こえて変な感じしますけど、これは立体音響いうやつですかね。」
「多分そうちゃう。」
「わ、わ、ほんま頭ふわんってなって変な感じ。私ちょいこの音響苦手かも。侑さんは大丈夫ですか。」
「うん、俺は気にならんかな。てかおもろ、いや面白い。」
「脅かす役の人のメイクと衣装すごいけど、大変そう。阿呆の子に怪我させられたらえらいこっちゃ。」
「あの、ままコちゃん。」

一通り喋りまくったところで侑に言われる。

「あ、すみません。こういうんも初めてやからつい。」
「え、初めてなん。」

進みながら侑がぽかんとする。

「はい。誘(さそ)てくれる友達もおらんかったし。」
「そない悲しいこと、さらっと言わんといて。俺の胸が痛い。」
「今侑さんと来れたからええし。」
「それは嬉しいんやけど、自分、怖(こわ)ないん。」

侑に言われて、一応気を遣ってもらったらしい、と美沙は判断した。

「今んとこは。映像とか音響がすごくてそっちが気になります。」
「流石動画作りの鬼。」
「私なんか小物ですて。」
「うん、再生数はともかく編集の設備と熱意は小物ちゃうで。」
「なんという。」
「ままコちゃんはもうちょい小物とか普通のなんたるかを覚えよか。」
「えー、だって今日日自分で編集請け負う子もおりますやん。」
「そーゆーとこやってっ。」

義兄とは正反対に激しく突っ込む侑の手が一瞬緩む。
その一瞬で美沙はまたなんとなく自分の手を握ってしまうが

「ままコちゃん、グーせんといていうたやろ。」

すぐ侑に言われてしまった。
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