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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第54章 【王者の恩返し】 その1


「ここ知っとう。有名な食べ放題のとこや。」
「お前がこんな店とか何とかを知ってるなんて珍しいな。」
「たまたま動画で見た。ここのは美味しそうやったから覚えとってん。」
「やっぱり媒体はTVじゃないのか。」

ふぅと息をつく力はしかし、日向からもよく顔が変わらないと言われる義妹がとても行きたそうな顔をしている事に気がついた。

「どうだ。」
「是非っ。」

尋ねる牛島に美沙は勢い込んで返すが、力は即答が出来ない。

「美沙を貸すのは構わないんですが、その、」

先を言うのは少し憚(はばか)られた。
某・及川徹ではないのだから義妹がセクハラを受ける心配はない、しかしなんたって高校バレー界の有名人・ウシワカだ。
ただでさえでかい体躯は目立つ上に、名と顔がメディアに出ているとなると有象無象がわらわらとよってくる恐れがある。
義妹がそれに巻き込まれる事は十分予想された。

さらなる懸念事項は両者とも天然である点だ。
指摘すれば2人とも否定する。しかし牛島はどことなくズレている事があるし、義妹は義妹でしばしば"半分ボケ"と呼ばれる通り、半分は突っ込み属性だがどうかするとボケまくる。
こいつらだけで会話するとボケにボケを重ねて収拾がつかない事が頻発する為、力としては妙な事にならないかと心配になる。

のであるが、それをそのまま言っていいものか力も迷う。
そしてどうやら牛島も力の反応で何か感じるものがあったらしい。

「どうしても心配というなら」

おもむろに牛島は言った。

「お前も来い。この際だ、お前の分も負担する。」
「ええっ。」

力はまた動揺した。隣の義妹も今何て言わはったと小さく疑問を呈している。
天下のウシワカから同行していい、ついでに兄妹揃って奢ると言われるとは思ってもみない。

烏野の他の連中だって穏やかではない。

「おいおいこれ何起きてんだよ。」

木下が早口で成田に耳打ちをする。

「知らねぇよ俺が聞きたいよ。」

成田もまた早口でヒソヒソと返す。

「縁下妹はもともと報酬の件があったとして、何をどうして縁下までこうなった。」
「龍、心配すんな、力もビビってる。」
「心配すんなの意味が迷子だ、ノヤっさん。」

田中ですら冷や汗、西谷は何も考えずに面白がっているフシがある。
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