第11章 煙管
「天女様……如何されましたか?」
「産まれそう……だって」
「産まれそう……?あ!あんた!!きみさん?!」
「知り合い?」
「はい……!」
「……どうしたらいいの?」
「きみさん!産まれそうかい?」
「んっ……!」
「産婆まで歩け……ねぇか」
産婆……?
聞いた事があるような……?
「そこで産むの?」
「はい……この近くにはないので歩いては……」
「駕籠!!」
「はい?」
「駕籠でそこまで運んであげてよ」
「え……?でも、天女様を家康様の御殿にお連れしないと」
「私なら大丈夫!それよりもこの人のが一刻もあらそうでしょう?」
「……う……産まれ……そう」
「大丈夫だよ……いま産婆さんの所に連れて行ってあげるから」
「あ、ありが……っ……」
必死になって痛みに耐えて、新しい命をこの世に送り出すなんて凄いことだよ。
私にはこの人を助けてあげるだけの知識も経験も無い。ただ、駕籠を使ってもらうことしか出来ないけど。
「この人をお願いしますね」
「わ、わかりました!!
きみさん!!天女様の御加護を頂戴したぞ!」
「……うん……ありが……とう……ございます……天女……さま」
「元気な赤ちゃんを産んでね」
「はいっ……」
額に張りついた汗を拭うと安心したかのように微笑みかけてくれる。
これから母になるっていう人の笑顔__
とても神々しく見えて美しい。
胸がとても熱くなる___