第11章 煙管
安土城でお世話になって1ヶ月が過ぎようとしていた。
あれから佐助さんは姿を見せてくれなくて、不安に思いながらも日々をそれなりに過ごしていている。
相変わらず政宗は私の部屋に入り浸り、平成の話を聞きたがる。
三成くんは私に本を読んでくれたりしてくれる。
最近では秀吉さんが読み書きを教えてくれるんだけど……それがちょっと困ってしまう。
「ほら……こうやって……」
「う、うん……」
私の背中から右手を添えて筆をはしらせていく。
「書き順は……こうやって……」
「っ……」
秀吉さんが手を動かすたびに胸が煩くなってしまう。それは……微かに香る煙管の香り。
実は私___
タバコを吸う男の人が好きだったりする
(なんか大人の男って感じがしてかっこいいと思うんだよね)
妙に意識してしまいそうで困ってしまうのだ。
「ほら、1人で書いてみろ」
「うん……あれ……?」
どういう順番だっけ?
香りに気をとられていたせいで思いだせない。
止まってしまう筆からは墨が落ちて黒いシミを作っていく。
「忘れたのか?しょうがないな」
しょうがない__
その優しい声音が頭の中を埋め尽くしていき………
結果、私は惚けてしまう。
最近では秀吉さんの印象が180度変わってしまった
(こんなにも甘くて優しい人だとは思わなかったよ)