第9章 美しい人との出会い
「帯はこっちのがいいか……?いや、こっちのが似合うか……」
「……あの……?」
「帯をこれにして小物で遊ぶのもいいか」
「……秀吉さん?」
私を置き去りにしてあれやこれやと言いながら、帯や小物を選んでいるんだけど。
「秀吉さん……買わないのに選んでもしょうがないですよ」
「買わない……?」
「はい」
「気に入らないのか?」
「そんな事ないですよ。気に入ってますけど……」
秀吉さんの選んでくれた物はすべて気に入ってる。
だから、困るんだよ。
欲しくなっちゃうじゃない
(お金持ってないのに)
「じゃあ問題ないだろ」
「いや、だから……そのっ……」
「これは秀吉様、いらっしゃいませ」
「おう、店主。これを一式、城に届けてくれ」
「はい、毎度ご贔屓にありがとうございます」
秀吉さんが懐から何かを店主に握らせているのを唖然としながら見つめてしまっていた。
これって……私に買ってくれた……?
「さて、次に行くぞ」
「あ、あのっ……!」
「うん?」
「どうして……」
「どうして……とは?」
「え……あの……その……私に?」
「ああ……夕餉までには仕立てあがるようにしてあるからな」
「夕餉……?」
「御館様に失礼がないようにな」
あ……そういう事ね。
信長様に会うのに身綺麗にしろって事なんだ。