My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「その…あの、…ユウ?」
「………」
もう一度呼んでみる。
だけど返事は無い。
言葉数少ないからこそ行動に起こしてくれるのは嬉しいけど、こういう時は無口なのが逆に気になる。
どういう意図でしてるのか、時々わからないから。
鎖骨を辿っていた唇が胸元の方へと微かに下りてきて、体が自然と身構えた。
本当にするのっ?
「私───」
「血生臭い」
「へ」
言葉を遮られて、ユウの顔がぴたりと止まる。
ぼそりとだけど確かに聞こえた、低い呟き。
…血生臭いって、言った?
「シャワー浴びたんじゃなかったのかよ」
「浴びたけど…」
「じゃあなんで血の臭い纏ってんだ」
肌に触れていたユウの顔が離れて、間近に見据えてくる。
眉を寄せた顰め面で。
あ…気付かれてしまった、かも。
「洗い流せないくらい大量の血を浴びたか、」
「あ、ちょっ」
「そうでなけりゃ、入浴後に流血したか」
「ん…ッ」
再び首筋に顔を埋めたかと思えば、ユウの唇が私の肌じゃなく包帯を留めてある金具に押し付けられた。
ぶちりと包帯ごと噛み切られて、チョーカーの下に巻いていた布が落ちていく。
ちょっと待って噛み千切るって。
はらりはらりと落ちていく白布に、首の火傷が見えたんだろう。
「…又は、入浴前に怪我を負ったか」
ユウの眉間の皺が、より一層深く刻まれた。
「なんでサード野郎に手当てされたもんが、悪化してんだ」
「………」
そのサードの所為で悪化したんです、ハイ。
…なんて言えるはずもなく。
「訓練が思った以上にスパルタで…ハハ」
空気を和らげるように笑い返してみる。
本当のことは言ってるし、ユウに怒られるはずは…わお。
眉間の皺が増えましたけど何故。
「なんでただの訓練で、ここだけピンポイントに火傷すんだよ。意図的なもんだろ」
「………」
うわぁ…本当、何度も感心させられるけどその洞察力凄いよね。
偶には逃げ道作って下さいって。
手を差し伸べて欲しい時は凄く嬉しいけど、逃げ出したい時は凄く困る。
「訓練内容はなんだ」
あ…珍しい。
独房から解放された後、一度もノアやサードのことに突っ込んでこなかったユウが、そんなこと聞くなんて。