My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「……もう。顔中青痣だらけだけど…」
「んなもんすぐ治る。触んな」
結局、二人の喧嘩は止められず盛大な殴り合いへと発展した。
部屋の前で暴れられて無視するなんてできないから、恐る恐る二匹のゴーレムをお供に止めには行ったんだけど…怖かった。
凄く怖かった。
あの殴り合いの中に身を投じるなんて。
クロエにも見せてやりたい。
喧嘩ップルなんて言葉程遠い喧嘩だったよ…寿命縮まる。
兎にも角にも、その時既に二人の顔は青痣だらけ。
いっつもいっつも喧嘩し合ってるけど、今日は一段と酷かったような…その沸点の低さはなんなの。
どうにかアレンを落ち着かせて帰して、結局ユウと報告書のまとめをすることになったんだけど…こうも酷い顔と面と向かってたら、気になって仕方ない。
手を伸ばせば、鬱陶しそうに掌で押し返される。
「いいからやるぞ、報告書」
「本当にやるの?」
「言い出しっぺが何躊躇してんだよ。さっさと仕上げろ」
あんなに嫌々な参加だったのに…まぁ、ユウがそう言うなら。
ユウの報告書の穴も訂正できるから、いいけどさ。
「───ここ、一応重要事項に入れておいた方がいいかも」
「そんな所まで見るかよ」
「見られて訂正喰らったらどうするの。やるに越したことはないでしょ」
それから小一時間。
ローテーブルに二人で並んで座り込んだまま、黙々とペンを走らせ書類と向き合う。
報告書を仕上げつつユウの提出物にも目を通せば、意外にも素直に従ってくれた。
表情と言い雰囲気と言い、渋々感は強いけど。
でも昔は口頭報告だって私に任せて、一切任務後処理につき合わなかったユウだから。
こうして一緒に作業できることは地味に嬉しいかも。
「うん、いい感じ」
隣から覗き込んだユウの報告書の出来を見て頷く。
確かに勉学としての頭は悪いかもしれないけれど、人生経験としての知識は普通にあるし、エクソシストとしては高いレベルだと思う。
そういう戦場での頭の回転を要されてきたユウだからかな、助言すれば的確に改正報告書を作り上げていた。