My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「何故それをわたくしに言いますの」
「ええと…」
「何か言いたいことがあるなら、本人に言えばいいでしょう。わたくしを介すのは止めてくれませんこと?」
「ごめんなさい」
相変わらずズケズケものを言うなぁ…。
でも確かに、テワクの言う通りかも。
ツンとそっぽを向いて足早に去っていくテワクを、指先で額を掻きながら苦笑混じりに見送る。
うん、確かに。
気になるなら、本人に言うべきかな。
「二人も、此処までつき合わせてごめんね。ありがとう」
そのままユウとアレンにも別れを告げれば、アレンはいいえ、と笑顔を向けてくれたものの、ユウは───
「ユウ?」
「………」
無言でその場に突っ立ったまま。
首を傾げれば、溜息混じりに手に持っていた何かでコツリと頭を小突かれた。
あ。
「お前から言い出したんだろ」
「…そうだった」
小突いた物は、報告書のバインダー。
そうだ、ユウに一緒に報告書のまとめをしようって誘ったんだっけ。
「さっさと鍵開けろ」
「あ、うん」
オラ、と背中を押されて急かされる。
もたもたとポケットから鍵を取り出していれば、傍に近付く気配。
顔を向ければ、神妙な顔をしたアレンが隣にいた。
「アレン?」
「雪さん、」
「え?何?」
再びがしりと両肩を掴まれる。
何事ですか?
「嫌な時は嫌って言っていいんですからね。例え相手が神田でも、合理の上でなければ立派なセクハラです」
「う、うん?」
「おいコラ何言ってやがるテメェ」
至極真剣な顔で忠告してきてくれるアレンに思わず頷けば、ドスの利いた低い声が響く。
ええと…何を言ってるのかな、アレンは。
「神田の事情なんて知りたくもありませんが見ていてなんだか不快だな、と思ったので。つい」
「何がつい、だ。俺の事情なんて知ったこっちゃねぇだろッ」
「知りたくもありません。でも我が物顔で雪さんの部屋に押し掛ける姿がなんだかムカつくな、と思ったので。つい」
「はぁ?テメェの感情なんか知るかよ!」
「僕も神田の私欲なんか知るかよ、です」
ああー…成程、なんとなくわかった……何それ恥ずかしい。
別にユウが部屋に押し掛けてるのは変なことする為じゃな…げふん。
何それすごぶる恥ずかしい。