My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「すっかり雪さんに懐いたなぁ…ティム」
「ガァ♪」
「私は大歓迎だよー。ゴーレムって可愛いよね」
私の右肩にちょこんと乗っているティムを指先で撫でれば、嬉しさを表現しているのか長い尾が揺れる。
ギザギザの口だけゴーレムなのに、仕草がいちいち可愛い。
『ピーピー』
「はいはい、お前も可愛いよー」
アレンに笑顔を返しながら、今度は左肩に乗っているゴーレムに目を向ける。
ティムより小柄な体で、まんまるな一つ目を潤ませながら主張してくる。
ユウのゴーレムだけど、主とは真逆の性格で凄く泣き虫。
ついでに臆病。
それでいて寂しがり屋で時々嘘泣きする小悪魔な所もある。
どうしたらそんな性格になるんだろ…暴君の傍にいて臆病にでもなったのかな。
でもユウのこと大好きだもんなぁ、このゴーレム。
「"お前"って呼び名も可哀想だし、名前付けてあげよっか」
『ピ!』
「賛成?何がいい?真っ黒な体してるから、クロ、とか…」
「トトロのススワタリにも似てませんか」
「確かに。じゃあまっくろくろすけ…長いな。くろすけとか」
『ピピ!』
「あ、気に入った?」
「オイ。何人のゴーレムに勝手に名前なんざ付けてんだ」
アレンと一緒にゴーレムの名前を思案していたら、呆れ混じりの声に呼び止められる。
顔を上げれば、先を歩いていたユウが一つの部屋の前で足を止めていた。
「ちんたら喋ってる間に着いたぞ」
「あれ」
いつの間に。
「やっと監視外ですわね。毎日監視してるトクサを尊敬しますわ…」
げんなりと疲れた様子でテワクが肩を落とす。
じゃあついて来なかったらいいんじゃ…と言えばまた馬鹿なの?って目で見下されるのはわかってたから止めた。
イザベラとクロエに別れを告げて、戻ってきた見慣れた自室前にほっと一息。
これで一人の時間が取れる。
「では、わたくしはこれで」
「あ、テワク」
「なんですの?」
「その…トクサに、少し…悪いこと、しちゃったかなって…」
「だからなんですの?」
地下の修練場で、自分の感情を抑え切れずに一方的にトクサを拒否してしまった。
トクサは訓練を止めて手当てしようって言ってくれたのに…あれは、やり過ぎたかも。
そうテワクに伝えようとすれば、あっさりと冷たい顔を返されてしまった。