My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
優しいキスだった。
お互いの牙が傷付け合うことを悟った上での配慮なのかは、雪には測り兼ねたが。
それでも唇同士を何度も重ね、感触を確かめるように触れ合う様は、優しさに満ちた行為。
何度も触れ合っては、啄むように下唇を柔く喰む。
催促に応えるようにそうっと口を開けば、空いた手で腰を抱かれ近付く距離。
くちゅ、と静かな部屋に響く微かな水音。
潜り込んできた舌は丹念にゆっくりと、上顎や歯の羅列を愛撫していく。
慎重に優しく鋭い犬歯を舐め上げられると、不思議と体が震えた。
「…ふ、…(……甘い)」
それは情熱的な深いキスと言うより、愛情で確かめ合うような甘いキス。
吐息混じりに熱を帯びた目を薄らと開けば、漆黒の眼に捕えられる。
真紅の妖艶な雰囲気をもう纏ってはいない、いつもの神田の瞳。
なのに何故か囚われたように目が離せなかった。
舌は絡まることなく、軽く触れ合う程度。
代わりのように一つ一つ雪の咥内を丹念に舌で愛撫していく。
ちゅ、と愛らしいリップ音が何度も混じる。
気付けば雪の体は、神田へと傾いていた。
「…はぁ…」
ゆっくりと時間を掛けたキスの愛撫。
神田が唇を離せば、熱のこもった吐息が雪の口から零れ落ちる。
「これでいいか」
「…っ…」
唇は離れたが、体は優しく抱き締められる。
耳元で囁く心地の良い低音。
思わずこくりと頷きそうになって、雪はぐっと唇を噛んだ。
「私が欲しいのは…お菓子の甘さだから」
「これじゃ駄目なのかよ」
「………だめ」
こんなに甘いキスなら、また欲しくなる。
しかし今それを認めてしまったら、全てが台無しとなってしまう。
トリートでは駄目なのだ。
トリックでないと。
「私はチョコバーが食べたいの。ふわふわのマフィンとか、砂糖をまぶしたドーナツとか」
「んなもんジェリーにでも作ってもらえ」
聞いてるだけで胸焼けしそうだと、神田が堪らず顔を顰めて離せば。
「私はユウに聞いてるんだから。ユウがお菓子をくれなきゃ」
ニッと楽しげに笑う雪が其処にいた。
「悪戯するぞ♪」